只見町で見られる花‐春夏編

〈 目次 〉
春に咲く花 :  エゾエンゴサク ・ オオイワウチワ ・ オオイワカガミ ・オオバキスミレ ・ カタクリ ・ キクザキイチゲ ・ キタコブシ
  コシノコバイモ ・ ショウジョウバカマ ・ タムシバ ・ ユキツバキ ・ フクジュソウ
夏に咲く花 : アカモノ ・ ウラジロヨウラク ・ ウワミズザクラ ・ オオシラヒゲソウ ・ ギンリョウソウ ・ サラサドウダン ・ サンカヨウ 
  シラネアオイ ・ ゴゼンタチバナ ・ ダイモンジソウ ・ タニウツギ ・ ツバメオモト ・ トチノキ ・ ヒメサユリ 
  ベニサラサドウダン ・ ホオノキ ・ ヤブデマリ ・ ワタスゲ


春に咲く花
■フクジュソウ Adonis ramosa 〈キンポウゲ科 フクジュソウ属 〉
   雪が消えると、真っ先に咲きはじめる、春を代表する植物。人里近い山の斜面や山裾で咲く姿が見受けられる。
   只見町では、4月〜5月頃に、道路沿いの斜面などでたくさんの花が咲く姿が見られるが、乱獲などの影響で
  急速に数を減らしており、花畑が見られる場所が徐々に失われてきている。環境省により、絶滅の危険が増大し
  ている種に分類され、環境省と福島県では、 絶滅危惧U類 に指定している。

■カタクリ Erythronium japonicum
  〈ユリ科 カタクリ属 〉
 平地から亜高山まで自生し、林内に群生する多年草。只見町では、カタバとも呼ばれ、早春の林床を埋め尽くす
ほどの見事な群落を作る。蟻が種子を運ぶことで有名で、種子の先端部にエライオソームという蟻が好む物質が
  付着している。発芽から開花まで約8年ほどかかり、花が咲くまでは1つの葉で過ごす。
 花期は、4月〜5月頃。
 
■ショウジョウバカマ Helomiopsis olientalis 〈ユリ科 ショウジョウバカマ属 〉
   山地の谷沿いや林野の湿った所に生える多年草。葉は、多数ロゼット状につく。茎頂に房状の花を横向きに数個
  つける。花被片は淡紅色〜濃紅紫色で、花後も緑色となって残る。
  花期は、4月下旬〜6月。
 
■コシノコバイモ Fritillaria koidzumiana
  〈ユリ科 バイモ属 〉
   コシノコバイモとは、越後(新潟県)のコバイモの意
  味。名前の通り、新潟や北陸等の多雪地帯に分布
  する。里の林縁などで見ることができる。
   福島県では、準絶滅危惧に指定されている。
   開花時期は、4月〜5月。
■キクザキイチゲ Anemone pseudo-altaica
  〈キンポウゲ科 イチリンソウ属 〉
   花がキクに似ることからそう呼ばれる。別名:キクザ
  キイチリンソウ。山地の落葉樹林内に生える多年草
  で、白や青、紫色の花色がある。
   開花時期は、4月〜5月。
 
■エゾエンゴサク Corydalis ambigua
  〈ケシ科 キケマン属 〉
   湿り気のある林内や林縁に生える多年草。
   明るく開けた場所を好み、キクザキイチゲなどと共
  に、咲くことが多い。4月下旬〜5月にかけて青紫色
  の花をつける。
■オオバキスミレ Viola orientalis
  〈スミレ科 スミレ属 〉
   日本海側の多雪地帯の山地に分布する多年草。
   先のとがった大きな葉が特徴で、山地の明るい尾
  根や崩壊地などに群生する。
   開花時期は、5月〜6月。
   
■オオイワウチワ
 Shortia uniflora var.uniflora

  〈イワウメ科 イワウチワ属 〉
   ブナの林床や岩混じりの尾根で見られる、常緑の
  多年草。関東に分布するものをイワウチワ、北陸から
  近畿に分布するものをトクカワソウという。
   東北地方のものは、オオイワウチワといい葉が長さ
  幅共に4〜8cmと大きく、円形となる。
   開花時期は、4月下旬〜5月。
■オオイワカガミ
  Schizocodon soldanelloides var.magnus

  〈 イワウメ科 イワカガミ属 〉
   やや標高の高い、明るい草地や岩場を好む、常緑
  の多年草。北海道南部から東北地方、中部地方の日
  本海側に分布する。
   積雪地に生えるオオイワカガミは、イワカガミより大
  型で、葉に多数の 尖った鋸歯がある。
   開花時期は、5月〜6月。
   
■タムシバ Magnolia salicifolia
  〈モクレン科 モクレン属 〉
   日本海側の山地に多く分布する落葉高木。雪解け
  と共に、6枚の白い花弁を咲かせる。
   町内には、よく似たキタコブシが自生するが、タムシ
  バとは生育地が分かれている。
   タムシバは、コブシの花のように、花の後ろに小葉
  が付かないことで区別することができ、間違えること
  はないが、同じような白い花を咲かせるため、町内で
  は区別せずにどちらも“コブシ”と呼ぶ。
    開花時期は、5月〜6月。
■キタコブシ Magnolia kobus var.borealis
  〈モクレン科 モクレン属 〉
   道路脇や人里近くの林縁に見られる落葉高木。只
  見町ではタムシバと合わせて“コブシ”と呼ばれてい
  る。本州中部以北の日本海側に分布しており、母種
  のコブシより葉や花がやや大きい。
   町内の黒谷川沿いにあるキタコブシは、胸高直径が
  83cm、樹高が17.2mで、キタコブシとしては巨木であ
  る。このキタコブシは、2002年に町の天然記念物に指
  定されている。
    開花時期は、5月〜6月。
   
■ユキツバキ Camellia rusticana 〈ツバキ科 ツバキ属 〉
   本州の東北地方から北陸地方の日本海側に分布する常緑低木。多雪地帯に適応した植物で、積雪におおわれ
   ることで、葉や蕾を凍らせずに越冬する。標高の低い森林の林床などに自生しており、只見町では、多くのブナ林
  でその姿を見ることができる。
   開花は、雪解けから1週間頃。5月〜6月まで花が楽しめる。
 
初夏から夏に咲く花
■ダイモンジソウ Camellia rusticana
  〈ユキノシタ科 ユキノシタ属 〉
   山地の湿った岩上に生える多年草。花弁は5個で
  下部の2枚が長く、“大” という字に似る白い花を咲か
  せる。
   只見町では、渓流沿いの岸壁に広く分布している。
   開花時期は、7〜10月。
■アカモノ Gaultheria ovatifolia ssp.adenothrix
  〈ツツジ科 シラタマノキ属 〉
   山腹の日当たりのよい登山道脇などに群生する、常
  緑小低木。夏につりがね形の白い小花をつける。
   秋には、赤い実が熟す
   開花時期は、6月〜7月。
   
■ヒメサユリ Lilium rubellum 〈ユリ科ユリ属 〉
   福島、新潟、山形の県境の山地にのみ自生する多年草。茎頂に淡紅色の花を、横向きに数個つける。
   只見町は、保護地などを除くヒメサユリの開花株数が、日本で最も多いことが調査で明らかにされた。自然状態の
  自生地が多いのが特徴。その多くが、雪崩で浸食された岩場の急斜面にあり、人が容易に近づけないことが、開花
  株の多さの一因となっている。環境省と福島県で、準絶滅危惧に指定。
   開花時期は、6月〜7月。
 
■オオシラヒゲソウ Parnassia foliosa var.japonica 〈ユキノシタ科 ウメバチソウ属 〉
   日本海側の山地の湿った岩上などに生える多年草。シラヒゲソウに似るが、全体的に大型となる。
   シラヒゲソウ(白髭草)の語源は、糸状に細裂した花弁を白いひげに例えたところからきている。
   福島県では、絶滅危惧T類に指定。
   開花時期は、8月〜10月。
 
■サンカヨウ Diphylleia grayi 〈メギ科 サンカヨウ属 〉
   山地から亜高山の林内に生える多年草。 深山の樹林下の湿った場所に生育しており、大きく広げた葉が特徴的
  で、茎頂に白い可憐な花を数個咲かせる。
   秋には、藍色の白粉を帯びた果実を付ける。
   開花時期は、6月。
 
■ツバメオモト Clintonia udensis 〈ユリ科 ツバメオモト属 〉
   低地から亜高山帯に分布する多年草。只見町では浅草岳の山頂近くで見ることができる。
   葉が、同じユリ科のオモトに似ており、花の時期には、白色の花を咲かせる。果実は、美しい濃藍色をしており
  それをツバメの頭に見立てたことから、和名の「燕万年青」がきているとされる。
   開花時期は、6月頃。
 
■ワタスゲ Eriophorum vaginatum
  〈カヤツリグサ科 ワタスゲ属 〉
 高層湿原に生える多年草。町内では、浅草岳の山
頂直下や大曾根湿原で見ることができる。
 おなじみの白い綿毛は、風を利用し種子を運ぶため
  に、花被片が花後のびたもの。雪解け後に花を咲か
  せるが、地味で目立たない。開花時期は、6月頃で
   白い綿毛が見られるのは、7月頃。
■シラネアオイ Glaucidium palmatum
  〈シラネアオイ科 シラネアオイ属 〉
 多雪地の山地に生える多年草。沢沿いや雪渓の脇
などの湿った場所を好む。
 花色は淡紅色〜青紫色と変異があり、ときに白色
  のものがある。花弁に見えるが、実は4枚の萼片。
   開花時期は、6月〜7月。
   
■ゴゼンタチバナ Cornus canadensis 〈ミズキ科 ゴゼンタチバナ属 〉
 亜高山帯に分布する常緑の多年草。
 未開花の株の葉が4個に対して、開花のある株では、葉が輪生上に6個つく。茎頂から1個の花柄をたて、花序
  を1個つける。4個の花弁に見えるのは総苞で、中央に小型の花が頭状に集まる。果実は赤く熟す。
   只見町では、浅草岳の山頂付近で見ることができる。
   開花時期は、6月頃。
 
■サラサドウダン
  Enkianthus campanulatus  〈ツツジ科 ドウダンツツジ属 〉
 本州北部から北海道の山地に分布する落葉小高木。ドウダンツツジの仲間では、もっとも北方まで分布しており、
庭木や公園樹としてもよく植えられる。
 只見町の大倉地区にある比良林(ひらばやし)のサラサドウダンは、稀に見る巨樹ということで、県の天然記念
  物に指定されている。1株の木のように見えるが、実際は7か所から生えたサラサドウダンが混生し、一つの大きな
  群落を作り上げている。 根回り4m、南北に16m、東西に14m、高さ3.7m、外周は52.6mもある。
   花冠は、淡紅白色で紅色の縦筋があり、この模様が更紗に似ていることから名前がついたといわれる。
   秋には、全体が赤く紅葉し美しい。開花時期は、6月初旬。
 
■ベニサラサドウダン
  Enkianthus campanulatus var.palibinii
  〈ツツジ科 ドウダンツツジ属 〉
 本州の東北地方南部から中部地方の北部の高所
に分布するサラサドウダンの変種で、花が鮮紅色を
  している。枝先から房状花序が垂れ下がり、5〜15個
  の鐘型の花をつける。
   開花時期は、6月〜7月。
■ウラジロヨウラク
 
Menziesia multiflora
  〈ツツジ科 ヨウラクツツジ属 〉
   本州の中部地方以北に分布しており、日本海側の
  多雪地に多く見られる。花色は変化が多く、狭鐘形の
  花を枝先に3〜10個ほどつける。
   開花時期は、6月〜7月。
   
■タニウツギ Weigela hortensis
  〈スイカズラ科 タニウツギ属 〉
   北海道西部、本州の日本海側の山地に生える落葉
  小高木。
   山地の日当たりのよい場所でごく普通に見られ、枝
  先や上部の葉腋に桃紅色の花を2〜3個ずつつける。
   只見町では昔、養蚕が行われていたが、「お蚕様が
  嫌うので、家の中に入れるものではない」とされた。
   開花時期は、6月頃。
■ギンリョウソウ Monotropastrum humile
  〈イチヤクソウ科 ギンリョウソウ属 〉
   山地のやや湿り気のある場所に生える腐生植物。
   全体が白色で葉緑素をもたない。名前の由来は、下
  向きにつく花と、鱗状の鱗片葉に包まれた姿を竜に見
  立てたことからきている。
   果実は液果となり、球形で下を向いたまま熟す。茎
  が倒れるとつぶれて種子をまき散らす。
   開花時期は、6月〜8月。
   
■ウワミズザクラ Prunus grayana
  〈バラ科 サクラ属 〉
   日当たりのよい谷間や沢の斜面などに生える落葉
  高木。葉が開いた後、新枝の先から伸びた総状花序
  に白い花が多数密集してつく。
   つぼみの塩漬けをアンニンゴ(杏仁香)とよび食用と
  するほか、果実は果実酒などにも利用される。
   花期は5月頃。
■トチノキ Aesculus turbinata
  〈トチノキ科 トチノキ属 〉
   渓流沿いの肥沃地や山地の沢沿いに生える落葉高
  木。円錐花序を直立し、直径1.5cmほどの花を多数つ
  ける。雌雄同株だが、ほとんどが雄花で両性花は、花
  序の下部につく。養蜂の蜜源として重要。
   花期は5月〜6月頃。
   
■ヤブデマリ
 Viburnum plicatum ver. tomentosum
  〈スイカズラ科 ガマズミ属 〉
   山地の谷筋など、湿った林内に多く見られる落葉小
  高木。枝先に5〜10cmほどの散房花序を出す。
  花序の中心部に、小さな両性花が多数付き、そのま
  わりを装飾花が取り囲む。
   花期は、6月頃。
■ホオノキ 
 Magnolia hypoleuca

  〈モクレン科 モクレン属 〉
   花と葉が日本の樹木の中で最も大きいとされる落葉
  高木。花は直径15cmと大きく、甘い強烈な芳香があ
  る。雌性先熟と呼ばれる開花様式をとり、同花受粉を
  避けることに役立っている。
   花期は、6月頃。
   
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